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一週間がすぎた。
あの夜のことは、世間には知れなかった。
途中で遭難して、みんなと、はぐれたことにした。ユウヤだけが自力で町まで、たどりついたことに。
だから、ユウヤの手が血で汚れてることは、誰も知らない。
それが悪かったんだと思う。
もしも、ユウヤの罪が他人の知るところとなっていたら、自制できていた。
少なくとも警察に拘束され、物理的な自由がなくなっていた。
(おれって、やっぱり、どっか、おかしいんだ)
会いたい。
たまらなく、会いたい。
(レラ。シオン。もう、どっちでもいい。会いたいんだ)
けっきょく、あの病院をおとずれた。
カギは持ってる。
それに、いい方法を思いついた。
懐中電灯を手に、まっすぐ地下へおりた。
死体安置所には、レラが眠っていた。
去る前に、ユウヤがボックスのなかに、おさめたのだ。
「レラ。聞こえる?」
レラは目をあけた。
レラの魂は、まだ、そこにいた。
そういうものが見えるユウヤだから、話すこともできる。
「提案なんだけど。おれのなかに入るってのは、どう?」
「わたしは、もう眠りたいんだけど」
「でも、シオンといっしょなら、生きたいだろ?」
「まあね」
「とりあえず、おれのなかにいたらいい。おれは科学者じゃないけどさ。君とシオンの知識があれば、君たちのクローンを作ることができるだろ?」
「それは、そうね」
「分裂さえしなければ問題はないんだし。新しい体を作ろうよ。今度こそ、完ぺきな君を」
「悪くないかも」
にっこり笑う顔は、このうえなく魅力的。
山奥で廃屋になった病院を見つけた人は、用心したほうがいい。
実験は、まだ続いている……。
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