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階段のところまで戻った。階段は非常口のすぐ近くだ。
「やだ。ほんとに、このさき行くの?」
エリカが、また泣きまねをする。いや、もしかすると、本泣きかも。
ここは、男でも二の足をふむ。
階段は、上と下に続いていた。つまり、二階への階段と、地下への階段。
二階への階段は、まだいい。薄暗いながらに、かすかに光がある。
だが、地下への階段は、黒い穴にしか見えない。
それに、なんというんだろうか?
変な匂いがする。カビくさいような、鉄くさいような。または、腐臭……。
「やなら、ここで待ってろよ。なあ?」と、ヒロキはユウヤたちの顔を一人ずつ見て、賛同をもとめる。
とりなすように、アスヤが応える。
「どうせ、地下には出口ないよ。二階から上を調べよう」
「そうだな」
ヒロキが、うなずき、階段をあがっていく。
ユウヤは、その場から動けなかった。
怖かったわけじゃない。
(聞こえる……)
誰かが呼んでる。
あの黒い穴みたいな地下から……。
ーー来て……こっちよ。
(君は誰?)
ーーレラ。
(レラ。それが、君の名前?)
あの姿が思いうかぶ。
前庭で見た、あの人。
ふいに、声がした。
「ユウヤ? 来ないのか?」
踊り場から、ヒロキが見おろしている。
「ああ。ごめん」
我に返って、みんなに続いた。
さっきのあれは、なんだったのだろう?
いつもの、あれか?
でも、何かが違っていた。
みんなのあとに、ついていった。
二階には病室しかなかった。
「あれ? なんか、一階より、きれいじゃない? クモの巣もないし」
ナツキが明るい声をだす。
「ここなら、休めそう。ね? アスヤ」
「うん。疲れたよね? 休もうか」
二人は一番階段に近い病室のパイプベッドに、ならんで腰かけた。
ヒロキが何か言いかける。が、ナオトが止めた。
「いいんじゃない? おれらも疲れてるし。ちょっと、休もう」
「そうだな。雨も、やまないしな」
「今夜は、このまま、ここで寝るしかなくない?」
「うわぁ。それはヤダ」と、エリカ。
「しかたないだろ」
みんなが、それぞれに、ベッドをイスがわりにする。
ユウヤも手近なベッドにすわった。とたんに疲労を感じた。抗いがたい睡魔をおぼえる。いつのまにか眠っていた。
目の前に女の子が立っていた。十五さいくらいの美少女。前庭にいた、あの人……?
印象が少し幼い気がする。
「君が、レラ?」
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