エピローグ1泥路月

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エピローグ1泥路月

生まれて… 来て… まず初めに愛を奪われ そして次に愛を奪われた 道を奪われ 可能性を奪われ 品格を奪われ 道徳を奪われ 自由を奪われ 尊敬を奪われ 友情をも奪われ 優しさを奪われる どろろ どろろよ 百鬼夜行を倒したところで お前は何を取り戻せた 辱しめを受け 差別を受け 暴力を受け 拘束を受け 飢餓を受け どろろ どろろよ お前この世に何故生を受けた この世の中から お前は何を取り戻せた 何処にでもあり 誰もが持つものの中で お前の持つのは命と身体と時間 恐ろしや 見えざる呪い 誰もお前の苦しみに気付くまい いっそのこと 妖怪変化の元に生まれたなら… よほど大事にされたであろうに… 百鬼夜行には少なくとも 百鬼夜行の名目がある お前に人の名目はない 時は過ぎる… お前は 目を奪われ 歯を奪われ 腕を奪われ 腰を奪われ 足をも奪われる 最後まで残されるのは 人としての命のみ あな恐ろしや 見えざる呪い どろろ どろろよ お前この世に何残す 人に通じぬ言葉を残す どろろよ どろろ お前この世に何残す 人に通じぬ想いを残す 寒くて辛い 月の 下
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