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エピローグ2 雨が…
地上に叩きつける悲しみは
何処からやって来たのか
入学式は優しく降る雨でした
どんより雲は少し明るく
知らない人と手を繋いで
初めてくぐる校門から
運動場ごしに見えた明るい校舎に
小雨の斜がかかる
それはきれいな雨でした
満開の桜に遠慮がちに…
それでも
か弱い桜の花弁を道連れに
地に堕ちて
自分の姿は
跡形も残さない
悲しみ
窓を伝う悲しみは
何処からやって来たのか
行き先も無く
傘もささずにとぼとぼ歩いたのは
肌にあたる冷たさが心に届くから
煩わしい熱を逃がしてくれたから
それとも
濡れてはいけない物が濡れてゆく
潰れてはいけない物が潰れてゆく
そんな自分を隠す為に空を見上げ
透明な物なのに生身の自分を隠す
瞳から流れる水すら隠してくれる
と
ずぶ濡れの私はそう思ったのかも
しれません
きっと
あの時ずぶ濡れの私は透明だった
傍にいる誰にも気付かれないまま
地上から消え失せたいと切に願い
道の凹みに溜まる悲しみは
何処からやって来たのか
いくら願っても届かない愛を恨み
街を歩けばありふれた愛を傍観し
何故何故何故と思うのです
人に聞いても困惑されるうちには
自分に向けられる愛はあきらめて
口を閉ざして無関心に生きる術を
それでも心に澱は溜まるばかりで
強がりも無表情も道化も通用せず
今でも…
きっと全てがうまくいったはず…
あまりにたくさん
透明の悲しみが降る日に
空にむけて
半世紀飲み込んだ言葉を
無音で咆哮する…
〇〇〇〇~〇
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