旅の終わり

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「またこの子か…」 「ああ、この子…」 結局その子は駐在所では必要な事は何も答えなかった 困った警察官は仕方なく、本庁に連絡を取り、迎えを要請した 1時間待って現れたパトカーから降りた二人組の署員が開口一番発した言葉がそれだった 「この子家出の常習犯なんですよ」 「そうなんですか?」 「頭よくてね…住所も電話番号も暗記してますよ」 さっきまで優しかったお巡りさんの表情が変わる 今考えれば… ずいぶん酷い事を言う大人たちだ 常習犯なら悪いのは子ども と、いう事になる 家出をしたい子どもなんていない 子どもが家出をしなきゃならない 家があるだけなのに… 大人は誰も気付かない その子はパトカーに乗せられた (お巡りさん…ありがとお) そう言うつもりだった でも 何も言えなかった… この子の自由を目指した旅はもうすぐ終わろうとしている また あの家に連れ戻される (こわい…) (誰か…たすけて…) (この世界は…嘘の世界なんだ) きっと そうなんだ もしかしたら…パラレルワールドは本当に存在して もしかしたら…そっちの記憶が夢に出て来るのかも… そう思いながら その子は眠りについた
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