禁断の恋

3/110
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
『……』 『親父やお袋は知ってるのか』 『知らない』 『なぜ、言わないんだ』 『言ったら別れさせられる、そんなの嫌』 美佐は勝也の身体にしがみつきながら涙を流した。 『そんなにその男が好きなのか』 『…うん…別れたくないの…』 『……』 勝也は泣き止むまで美佐を抱き締めた。 それから暫くして美佐は落ち着き社長室を出ると店を出ていった。 勝也は机に近づき椅子に座るとパソコンを開き仕事を始めた。 その頃、豊は社長室でソファーに座って美佐のことを気にしていた。 『社長…聞いてますか…社長』 『…何?』 秘書の話を聞いていなかった豊は驚いた顔で秘書を見た。 『何か悩みごとでもあるんですか?』 『別にないけど…』 『本当ですか?』 『あぁ…』 豊は椅子から立ち上がりドアに近づいた。 『どこに行くんですか』 『考え事をしたいから1時間だけ、1人にしてくれないか』 豊は社長室を出て屋上に向かった。 それから暫くして机の上に置いている携帯が鳴った。 秘書は机に近づき鳴りやまない携帯を掴み通話ボタンを押すと耳にあてた。 『……』 『もしもし豊さん仕事中にすみません、勝也です』 『社長は今、いません』 『……』 知らない男の声に勝也は驚き無言になった。 『社長に伝えたいことがあるなら私が伝えておきますよ』 『妹のことで話があるので携帯に連絡くださいと』 『わかりました、必ず伝えます』 秘書と勝也は同時に通話ボタンを切った。 その頃、屋上にいる豊は煙草を吸っていた。 『美佐ちゃんに見られたのは不味かったな…』 煙草を地面に捨て靴で踏み火を消すと豊はポケットに手を入れた。 『あれ?携帯がない』 『社長』 携帯を持って秘書が現れた。 『勝也さんという人が妹のことで話があるから連絡してほしいと電話がありました』 秘書は豊に近づき携帯を差し出した。 『そうか、わかった』 豊は携帯を受け取った。 『驚きました、社長が男性とキスをするなんて…』 『何を言ってるんだ』 『社長』 秘書は驚いた顔の豊に寄り添い唇を重ねると顔を見つめた。 『……』 突然の出来事に言葉がでない豊は驚いた顔で秘書を見つめた。 『不倫をするなら俺としませんか?』 秘書は豊の左手を掴み薬指にはめている指輪をはずすと豊の顔を見つめた。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!