禁断の恋

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『馬鹿なことを言うな』 怒った口調で言うと豊は秘書から指輪を奪い取り屋上から離れていった。 『女性と結婚をした社長に手を出すのを諦めてたけど、俺にもチャンスが来たかも』 秘書はニヤリと笑った。 社長室に戻った豊は鞄の中に携帯と指輪を入れその鞄を持ってドアに近づいたその時、秘書と出くわした。 『どちらへ?』 『用事ができたから先に帰る、あと宜しく』 『わかりました』 『……』 豊はその場を離れビルを出ると歩いて勝也の店に向かった。 その頃、勝也は接客をしていた。 『勝也君、日曜日、暇?』 女性はワインが入ったグラスを掴んだまま勝也に問いかけた。 『日曜日にならないとわかりませんが何故ですか?』 『私とデートしてほしいの』 『すみません…』 『どうして?』 『俺には好きな人がいるんです、その人を悲しませたくないから、デートはできません』 『そう…一也を呼んでくれませんか』 『わかりました』 ソファーから立ち上がり勝也がその場を離れると女性はワインを一気にのみグラスをテーブルに置いた。 それから暫くして一也が現れ女性の隣に座った。 ー社長室ー 勝也は机に近づき椅子に座ると携帯を開き着信履歴を見た。 『かかってきてないか…』 携帯を閉じパソコンを開くと勝也は仕事を始めた。 10分後、ドアをノックする音がした。 『どうぞ』 パソコンを打ちながら勝也が返事をするとドアが開き豊が現れた。 『仕事中にすまない』 豊が声をかけると勝也は手を止め顔をあげると豊に目を向けた。 『豊さん』 勝也は椅子から立ち上がり豊に近づいた。 『俺の携帯に電話をしてくれたんだろ、かけなくてゴメンな』 豊はソファーに近づき座った。 勝也もソファーに近づき向かい合ってソファーに座ると豊の左手の薬指に目を向けた。 『豊さん、指輪はどうしたんですか?』 『指輪なら鞄の中に』 豊は鞄の中から指輪を取りだし左手の薬指にはめた。 『どうして指輪をはずしてたんですか』 『指が痛くて指輪をはずしてたんだ』 『そうですか』 『それで美佐ちゃんは?』 『美佐は俺が豊さんを好きだと知ってました…だから心配しなくても美佐は江梨に言ったりしません』 『……』 『どうかしたんですか?』 勝也はソファーから立ち上がり悲しげな顔でうつ向く豊の隣に座った。
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