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「きーた村。畑田は? もう帰った?」
俺の同期、スポーツ部の里中は、時間があればこの前まで直属の後輩だった畑田さんの様子を、ちょくちょく見に来る。
畑田さんの事が可愛くて仕方ないらしい。
「さっき帰ったばっか」
「ふーん? なぁなぁ。桜沢悠斗と畑田っていい感じなん? そんな噂を小耳に挟んだんだけど」
里中は、可愛い後輩に変な虫がつくが嫌なのだろう。
てかコイツ、美人の嫁さん捕まえておいて、後輩の心配って何なんだ。
「まだ付き合うとこまで行ってないっぽいよ。まぁ、今日も桜沢悠斗とゴハンの約束してるみたいでさ、さっき気合入れて髪の毛ぐるんぐるんに巻いてたよ。バッハかと思ったし」
「桜沢悠斗も変わってるな。バッハ連れて歩きたいとか」
「いいんじゃん。音楽家同士。話も合うんじゃん?」
「片方偽物じゃねぇか」
『クククッッ』
畑田さんをネタに里中と笑う。畑田さん、ゴメン。
「いいのかよ、北村は。北村って、畑田の事ちょっと気に入ってただろ?」
里中の質問に目を丸くしてしまった。
何を言っているんだ、コイツ。
「は?」
「だって、北村。畑田のミスのフォローしてやったり、畑田の残業に付き合ったりしてたみたいじゃん」
重ね重ね、何を言っているんだ、里中。
つーか、それは里中だってスポーツ部時代にやってたじゃねぇか。
「里中が菓子折り持って『くれぐれも宜しく』って言ったからだろうがよ」
「本当にそんだけかよ。で、そんな傷心の北村に朗報。俺の嫁さんの友達紹介してやろうかと」
里中は、どうしても俺を恋に破れた男に仕立て上げたいらしい。
軽くむかつく。…が、
「カワイイ? そのコ」
彼女は欲しいわけで。
「百貨店の受付嬢」
「是非ヨロシク」
この線も、きっといつか繋がる。
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