光線。

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 そんな秋との付き合いは、幸せでしかなかった。  俺も秋も家を出て一人暮らしをしていたから、お互いの部屋を行き来するのも楽しい。  2人共、何もないところから想像力だけで形にする仕事をしている為、どちらかの部屋で仕事をする場合、背中合わせになりながら、何時間も無言で作業をする事もあった。   互いに似た環境で、理解し合いながらシゴトが出来る事も幸せ。  だって、他の女ならこの無言の時間に堪えられるとは思えないし。  秋といる時間は、何をしていても楽しかった。  俺には秋しかいないんだと思った。  恋も仕事の順調。順風満帆だった。  秋もコンスタントにネット小説を発表し、その中の何冊かは本になって書店に並んだりもしていた。  その頃の俺らの夢は、『秋の小説が映像化になった時、俺が音楽を付ける』というものだった。  秋なら、俺なら、叶えられるものだと思っていた。  だけど…。
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