断線。

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 ------------結局、秋の姿を確認する事は出来なかった。  秋の母親が『娘のあんな姿、見せられない。ごめんなさい』と俺には会わせずに、司法解剖に回してしまったから。  吐き気も頭痛もするのに、涙が出てこない。  だって信じられない。受け入れられない。全然ピンと来ないんだ。  秋が死んだなんて。  嘘だろう? 冗談だろう?  秋がこの世にいないなんて。もう会えないなんて。  事実を受け止められない俺は、『これは何かの悪い夢で、寝て起きたら秋は元気に生きているはずなんだ』なんて、この期に及んで現実逃避を図る。  病院で頭痛薬と吐き気止めを処方してもらい、その中に入っている眠気を促す成分のお陰で、その日は眠れた。  だけど、寝て起きたところで事実は事実。覆るわけがなかった。  2日後、秋の母親からマネージャーに連絡が入り、秋の通夜と告別式の日取りが告げられた。  秋が、死んだ。
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