228人が本棚に入れています
本棚に追加
「…悠斗、行くぞ」
秋の傍から離れようとしない俺を見兼ねて、一緒に参列していたマネージャーがオレの肩を掴んだ。
ここにいたって秋は生き返らない。分かってる。
なのに離れがたくて。
でも、ずっとこうしていてもしょうがない事は分かっていて。
「好きだ」
秋にキスを落とし、秋の母親から預かっていた秋の遺品を祭壇に置いた。
俺が秋にプレゼントした指輪。秋が購入してくれたチケット。2つ共、秋に持っていて欲しいと思ったから。
秋の最後の寝顔を脳裏に刷り込み、マネージャーとその場を離れた。
秋との最後のキスは、一生忘れない。
あんなに冷たいキスは、一生忘れられない。
マネージャーと、告別式の会場のロビーにあるソファーに座る。
散々泣いた俺に、
「ほら」
と、マネージャーがペットボトルに入った水を差し出した。
有難く頂き、出し切った水分を補う。
「秋さんは、悠斗の事が本当に好きだったんだろうな。最期に悠斗の最高に輝いている姿を目に焼き付けて逝くなんてさ」
ポツリ、マネージャーが口を開いた。
「……」
落ち込む俺への気休めなのか、励ましなのか、慰めなのか。素直に受け取れなくて、無言でマネージャーの話に耳を傾けた。
「俺には秋さんの気持ちは分からない。分かるもはずないから、完全に憶測なんだけどさ。秋さん、本当はもっと前に死にたかったのかもなって。小説が書けなくなってしまって、ずっと苦悩してたんだろ? だけど、悠斗のツアー中に行動しなかったのは、悠斗の気持ちを乱したくなかったからなんじゃないかなって。わざわざツアー最終日を選んだのは、そういう事なんだろうなって」
「……」
やっぱりマネージャーの言葉は素直に入ってこない。だって、
最初のコメントを投稿しよう!