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水の宮にて
水の宮の表扉が開くと、スティルグレイ・アダモントとヘルクス・ストックは、中に居たサリ・ハラ・ユヅリに挨拶した。
水の宮は表神殿内の施設のひとつで、サリの姉、水の宮公であるカリ・エネ・ユヅリが管理している。
この施設は、大陸の人々が個別に持つ4種の力、すなわち土、風、水、火の異能と呼ばれる力の種類を判別し、水の力の能力制御の仕方を教えるためにある。
今回、サリは、セルズ王国という大陸西側の国に赴くため、護身の術を習得するべく、アルシュファイド王国国格彩石判定師ミナ・ハイデルの護衛である彼らに、手伝いを頼んだのだ。
3人は修練室に入ると、1カロンのサイジャクを床に並べ、ひとつひとつ消していった。
サイジャクとは彩石(さいしゃく)のひとつで、人の異能の力を減少させる働きがある。
ちなみに、サイゴクは力を増大させ、サイセキは力そのものを内包している彩石だ。
彼らがサイジャクを消しているのは、サイジャクが持つ力量1カロンと同等か、それ以上の力を放出して、石を使用したためであり、それが現在の水の宮含む四の宮の基本の修練法なのだ。
彼らは、1カロンを、自分の律動に合わせて消すことで、力の制御を覚えているのだった。
これは主にスティルグレイ…スティンとヘルクスのための修練で、昨日もやっていた2人は、徐々に力の制御が緻密になっていく。
それを見ていたサリは、にっこり笑って、すごいですわ、と声を掛けた。
「さすがに騎士さまは上達が早いんですのね」
誉められると悪い気はしない。
スティンもヘルクスもサリの素直な称賛に、思わず笑みをこぼす。
そんな中、ひとつの言伝がサリに届き、現在地と都合を聞いてきた。
スティンが返信を飛ばしてくれ、1時間ほどすると言伝の送り主であるミナが来た。
今日は、彼女の護衛騎士団であるハイデル騎士団員が全員休みのため、他の正騎士2人が護衛に付いていた。
名は、ハルキオレ・カスタスとナキシエル・ミハネマという。
「え、3人でどうしたの?」
驚いている様子に、サリは笑顔で答えた。
「セルズ行きに向けて特訓ですわ」
そうして、昨日もカリの監督下で3人、修練や術の習得に励んでいたのだと話した。
「あんまり根を詰めると倒れちゃうよ…」
サリは、ほんのり頬を染めた。
「カィンにもそう言われましたわ…だから大丈夫です」
「そ、そう…?」
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