0人が本棚に入れています
本棚に追加
その日の夜
「一体どうしたって言うんだ、母さんは!夕飯が食べられないなんて、大丈夫なのか!」
夕飯すら要らないと、部屋に籠もってしまったサカエさん。
マザコン息子は、心配で台所でいらついていた。
「そんなに心配なら、様子を見てきたらどうです」
あきれ顔の妻に、彼は真剣に言う。
「母さんが、寝たいから起こさないでくれ。部屋に入るなと言ってるのに入れるか!」
「はいはい、可愛い可愛い息子が入れないのなら。嫁は絶対に無理ですよ」
妻に呆れられて、今度は娘に矛先が向く
「楓、母さんが心配じゃないのか」
「アタシだって胃が痛いくらい時々あるし。明日になったら、ケロッとして爆食するって」
「私も楓と同意見ですよ。お義母さん心配要らないですよ」
嫁と娘に大好きな母親をけなされて、怒りにまかせてテーブルをバンッ!と彼は叩いて立ち上がった。
その足で、母の部屋に向かうと大声で声を掛ける。
「母さん。体調はどうなんだ」
しばらく待つが、中から返事は無い。だが、聡が一方的にまた話しかける。
「遠慮するなよ母さん、病院行くか?」
それでも沈黙は続く。
「聞いてるなら返事くらいしてくれよ。母さん!!」
さすがに、我慢しきれなくなったのか聡は襖を開けた。
「うわあああああ、母さんがいない」
悲痛な彼の声が響く。
最初のコメントを投稿しよう!