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しかし、毎日幸せそうに味よしに通う母親を見て堪らなくなったらしい。
彼は突然立ち上がると携帯電話をひっつかみ、どこかに消えていった。
「お父さんどうしちゃったんだろう」
「何かする気よ、きっと」
妻の予想は、どうやら的中していたらしい。
彼は勤め先に苦しい言い訳をして有休を取得しているようだった。
その日の午後、聡は味よしの専用駐車場にいた。
「ちょっと、早急な気もするけれど。こうでもしないと、心配でいられん」
ひとり言を言いつつ、何かを手に彼は車から出た。
赤いのれんが、取り込まれるのを待っていたのだ。
入り口を開けると休憩に入ったのか、カウンターで新聞を開く年配の男性と目が合った。
「お客さん、申し訳無いけれど休憩中なんですよ」
店主は立ち上がって、申し訳無さそうに頭を下げた。
「あの。私、石川と申します」
そういった瞬間に、目の前の男性はハッとして頭を下げたままになってしまった。
「突然すみません、お話したいことが」
その声に、彼は申し訳無さそうに顔をあげると
「私、小林源太郎と言います。お母様、いえ・ ・・サカエさんには大変 お世話になっております」
と、挨拶をした。
「こちらこそ、母がお世話になりまして」
挨拶が済むと、源太郎は椅子を引き聡に勧めた。
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