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「大体、お話の内容は分かります。
息子さんが心配なさるのも当然かと。
実は私、あなたのお母様に恋文を渡しました。
一目惚れでした」
源太郎は言葉に詰まった。
しかし、聡は反対する気は無い。
「私はお二人を応援したいと思っています。
母は、50代で父を亡くしました。一生『おかえり』をいう相手のつもりだったのに。
もう、戻って来てくれないのね、と良く泣いてました。
ですから、母には『おかえり』と心から言える相手を得て欲しいのです」
「お付き合いを許可して貰えるのですか」
「もちろんです!そこで、1つだけお願いがあるのです」
「何でしょう、何でも言って下さい」
「こういう言い方は、大変失礼かと思いますが。母も貴方も、余命は10年程度でしょう。
だからこそ、時間が大事だと思うのです」
「もちろんです。でも、無理に戸籍を整える気は有りませんから安心してください」
その言葉を聞いて、聡は苦笑いをすると先ほど持って来た紙を2枚彼に差しだした。
「明日、母の81歳の誕生日なのです。母は連日、食欲不振を理由に夕食を食べません。
それなので、医者に強制連行すると言いどこかに連れ出します。
この2枚の紙でサプライズをしたいのです。ご協力願えますでしょうか」
「これは・・・」
源太郎は開いて目を見張る。
「婚姻届けでは無いですか。でも、こちらの1枚は何に使うのすか」
「それはですね、今からご説明させていただきます」
この後、2人の笑い声が響き渡り。
17時半の夕方の営業時間前に、店舗前で男2人熱い握手を交わしたのだった。
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