SAKAEバアサマに乾杯

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朝から、聡はソワソワしていた。 サプライズの予定日だが、実際に上手く行くのか、何よりもサカエさんが怒り出さないか。 色々と考えると、軽く武者震が出てくる。 結局、サプライズの舞台は自宅ということにした。 千鶴子と楓は、近所の花屋にとびきりの花束を取りに行っている。 「なあ、母さん。今日は、誕生日だし昼飯どこかに行こうかって話しになってるんだ」 「そうかい」 気のない返事をしながら、サカエさんはなぜか古いアルバムをめくっていた。 「オヤジの写真かい」 「ああ、アンタのオヤジさんだよ。アタシの『おかえり』をいう相手は皆帰ってこないんだよね」 「なんだい、珍しい神妙になったりして。まさか、そんなに体調が優れないのか母さん」 「そういうわけじゃないけれど、お父さんが怒っちゃいないか心配でね」 「何か怒られるとしたら、不摂生だな。今日は俺の会社の人から教わった、体調不良改善の  針灸院の先生を呼んでるから。まず見て貰えよ。もうすぐ、来る筈だから」 「なんだい、鍼灸院って」 サカエさんが、嫌そうに顔をあげた時にインターフォンが鳴った。 「お、先生が来られたみたいだ」 「聡、止してくれよ」 玄関に向かう彼の後を追ったサカエさんは、そこに来た相手を見て目を見開いた。 そこにいたのは、スーツ姿の源太郎と千鶴子、楓だった。 「げ、源さん」 「サカエさん、実は今日は1つお願いが有って来たのです」 彼女は、後ろに立つ息子を何か言いたげに睨んだ。 「ほら、母さん」 彼はそう言うと、玄関の源太郎の前に母の背中を押してつれて行った。 「昨日、息子さんにもお話したんだが。店がね、私1人で回すのが体力的に難しくなって来て。  出来れば、サカエちゃんに手伝って欲しいと思ってね。ご挨拶に来たんだよ」 「ああ、なんだ。何事かと思ったよ」 ほっとしたのか、彼女の顔に笑顔が浮かんだ。 「で、これ・・・労働条件をしっかり提示したいと思って書いて来たから見て欲しい」 差しだした紙は、手書きの求人票だった。 「さあ、母さん条件については俺も千鶴子も了承済みだからしっかり読んでくれ」 サカエさんは、ゆっくりと眼鏡を持ち上げて求人票を持った手を伸ばして目を細める。 「業務内容『おかえりを言う』『朝晩の食事作り。昼は店のまかない付き』  『基本住み込み:住み込み(条件1)通い(条件2)参照』って・・・」
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