終章

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中では、賑やかに笑い声が響いている。 どの顔も幸せそうだ。 玄関に立つ二人に中から、それぞれ声が掛かる 「慎太郎、遅い!」 「楓、早くしなさい。皆、飲み物待ってるのよ」 一斉に視線が集中して、今度は二人に話しの中心が移る。 「あら、ああやって見るとここの新居は若い2人の引っ越しみたいね」 「本当に、お似合いだわ。折角だから、2人とも付き合っちゃえば」 「おいおい、お母さんだけでなく娘さんまで、我が家にいただく訳に行かないだろう」 お祝いムードで、皆軽口になっている。 その言葉に楓は、なぜか胸がどきどきして止まらなくなっていた。 自分で、顔が真っ赤になって熱くなっているのに気が付く。 それに気が付いたサカエさんが、顔を見に走り寄る。 「楓、アンタ何を真っ赤になってるのさ!」 下を向いた彼女の顔を覗き込むと、頬をツンツンと突く。 「お、お祖母ちゃん」 彼女の声が裏返っている。 満足そうにサカエさんはうなづくと 「慎太郎さんも、男前だもんね。背も高いし、この子が赤くなるのもしかたない」 ついでに、肘で慎太郎の腹の辺りをツンツンと突く。 「慎太郎さん、楓はどうだい」 と、からかい始める。 彼は、さささっと逃げると 「はい、飲み物です」と適当に皆にペットボトルを配りだす。 なぜか、顔をあげない所を見るとまんざらでも無いようだ。 それを見た源太郎は、ペットボトルを受け取り孫息子の顔を覗き混む 「お前、赤くなってるのか。そうか 、楓ちゃん気に入ったのか。そりゃちょうどいいや」 と、アハハハハ!と大声で笑った。 それを受けて、両家の面々にも笑いが伝染していく。 「笑いと幸せは、どんどん広がっていくものだからな」 源太郎がそう言うと、また笑いが広がる。 その笑いが伝染したのか、新居に置かれた遺影2枚も笑顔になっている気がするのだった。 <終わり>
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