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台所の母に声を掛けた彼女だが、それを聞きつけたサカ エさんが戻って来て
背後で仁王立ちになる。
「あ・・・お祖母ちゃん。おはよう」
焦る彼女に
「楓、お祖母ちゃんに向かってサカエさんとは何事だい。お尻ペンペンだよ!」
なぜか手に持った箒を構えると、彼女のお尻目がけて勢いよく振りかざした。
「ちょっと待った、お祖母ちゃん。私が悪かったから、やめ、やめて。ちょ、ちょっとお」
待ったが聞かないサカエさん、箒がお尻にヒットして悲鳴を
あげながら楓は台所に逃げ込んだ。
「全く騒がしいわね、そろそろ、あの人の扱い覚えて頂戴」
「だって、お祖母ちゃんいないと思ったし」
「面白がって、サカエさんって呼ぶからでしょ」
サカエさんは、ご近所様は誰もが知ってる名物バアサンだ。
誰でも、彼女をサカエさんと呼んでいるのだから孫も呼んでも良いと思っている様だ。
そんなことをしている間に、裏庭で煙草を吸っていた一家の主である聡が戻って来た。
石川家では、朝食は家族揃って食べるのが昔からの習わしだ。
「今日も母さん今日も元気だな」
聡は、自他ともに認める強烈なマザコンだ。
どこにいようとも、母親の動向を気にしている。
先ほどの楓とサカエのやりとりもどうやら庭で様子をうかがっていたらしい。
サカエさんが元気なのは、彼にとって幸せらしい。
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