静かな日常と小さな好奇心

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 15年前に比べたら、日本は様変わりしたそうだ。  母によると、15年前までは国民のほとんどが毎日同じ時間に起き、働きに出て、同じ時間に帰るか時々(というかほぼ毎回)残って遅くまで仕事をしていたらしい。母もその頃、まだ三歳だった僕を保育園に預けてスーパーマーケットのレジ打ちの仕事をしていたと言っていた。今聞くと不思議な話である。人間がレジ打ちをしているなんて、レジに長蛇の列ができてしまいそうだ。  そして、これは僕が学校で教わった知識なのだけれど、15年前日本は戦争をしていた。というか、戦争をしている国を手伝っていた、らしい。とは言え、大昔に起こった第二次世界大戦とかそういう規模のものではなく、世界各国のいろいろな場所で起こるテロの、大元を絶つための戦争だった、らしい。さっきかららしいらしいと言っているが、習ったからといってなにかそれらしい体験をした訳ではないので、僕にはピンとこない話なのだ。で、日本はその戦争で国民の命を少しでも救うために、まず遠隔操作で操れる人型のロボットを開発した。空から爆弾を落とすだけならドローンでもできるが、何かもっと人らしい動きができないと困ることがあったようだ。戦地に生身の人間が行かなくてすむように、その戦闘用ロボットは開発改良を重ねられ、ついに遠隔で操作をしなくても、自分で考えて動ける戦地赴任用アンドロイドが完成した。そのアンドロイドが出来上がるまでにテスト機として作られたり、型遅れになって戦地には行かなくなるロボットやアンドロイドが大量に”余る”ことになる。日本政府は、今度はその”余り”を、日本国内の生産性のために役立てようと考えた。そして出来上がったのが、今の日本である。   現在の日本では、一般普及用に改良されたロボット、またはアンドロイドたちがほとんどの仕事を受け持ってくれている。人間のように余計な感情がないので、人件費、ではなくアンドロイド件費は整備やアップデート費用のみ。人間が作業するよりも生産性が高いので、それでも容易く元が取れるそうだ。僕はもう何度もアンドロイドのレジ係員に会計をしてもらったが、受け答えは人間とほぼ変わらない。あれで感情が無いっていうのが、ちょっと不思議にも思える。でも、アンドロイドには感情がないと先生が言っていた。感情や表情に見えるものは、彼らがそういう風に見せられるよ  
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