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「やっと来た、碧先生。これ、この間撮った鶴見(つるみ)さんのエコーの写真。内科の方に送るから、ハンコよろしくね」
「はい。わざわざすみません」
医局に入ると、さっそくセンター長からエコー写真を受け取り、書類にハンコを押して返す。
「うん、ありがとう。あ、そうだ」
それを受け取ると、彼は思い出したように目線をカルテから私の方へと移す。
?
「院長先生から呼び出しがかかってるよ。どうしたんだろうね、こんな日に」
「そうですね」
呼び出しの要件が何なのか、薄々は分かっているが、事情を知らないセンター長に話しても杞憂になるだけだろうから、笑って相槌を打っておく。
しかし、本来は休みの土曜の午後にわざわざ出てくるとは、院長も大変だ。
「急患などがいればそちらを優先させますが、大丈夫ですか?」
「今のところは落ち着いてるよ。行くなら今のうちだね」
「それでは失礼します。ついでに、内科に鶴見さんのエコー写真も渡してきますか?」
「ああ、そうだね。じゃあよろしく」
そう言って彼は写真と書類が入った封筒を渡す。私はそれを受け取ると、踵を返して扉へ向かった。
心なしか、足取りは重い。
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