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「院長、碧です」
そう言って院長室の扉を叩く。中からは「どうぞ」という声が聞こえてきた。
「失礼します」
扉を開け、中に入ると院長用の机の前にある応接スペースに、人がいることが分かる。
「海! After a long absence(久しぶり)!」
薄茶色の髪をした人影は、そう言って抱きついてくる。
「・・・After a long absence(お久しぶりです)、陸(リク)」
溜め息を吐きながら、自分に抱きついてきた女性の体を引きはがす。
やれやれ、と溜め息を吐くと応接用のソファに座っていた人物が小さく笑ったのが分かる。
「陸、お前日常会話で英語を使ったら罰金、って言われてなかったか?」
そう言って立ち上がった青年は、自分の知っている髪の色をしていなかった。
「ご無沙汰してますね、陽(アキ)。ところで、その髪の色は・・・」
「ん?ああ、カツラ」
彼が頭を持ち上げると、そこから金糸の髪が覗く。
「日本に来て、じろじろ見られるのが不快だったから、すぐ買った」
「そうなんですか」
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