Caffe moca di caffe

10/13
前へ
/470ページ
次へ
 立ち尽くしていると、後ろから肩を叩かれる。  そこにいたのは、私に今の職場を紹介してくれた人で以前の職場の病院管理責任者、呉羽院長その人だった。  彼女はそのまま、近くの椅子に私を促す。 「院長、その折はお世話になりました」 「元気でやってるみたいで安心したわ。よく働いてくれてる、って、そちらの施設長からも聞いてるしね」 「救命と比べたら、大分楽かもしれません」 「それもそうね」  笑い混じりにそう言うと、彼女も笑顔で返した。 「それより院長、槙さんって・・・」 「・・・あの子が大学生だった頃、付き合った男がロクでもなかったらしくてね」  そう言うと、院長は溜め息を吐く。 「父親の死もあって、すっかり人間不信になっていたところに、主人が声をかけたのよ」
/470ページ

最初のコメントを投稿しよう!

352人が本棚に入れています
本棚に追加