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「そうですか」
その言葉が、虚しく響く。
「あれ以来、あの子は周囲に無関心のまま息をしていた」
確かに、周囲に心を寄せず、淡々と生きていた彼女は『息をしていた』だけだったのだろう。
・・・碧先生に出逢うまでは。
「今回のことは、彼女のろくでもない元カレが、彼女をAVに出演させようと目論んだことが原因よ」
「AV・・・」
それであんな格好のまま逃げ出したのかと、ようやく合点がいった。
「だけど、それも私が手をうったおかげで、段々追い詰められて行ってね。果ては、彼女をまきこんで、心中しようとしていたみたい」
それは、彼女にとっては迷惑以外の何物でもないだろう。
まして、彼女はあの時は身重だったはずだ。
「院長、彼女のお腹の中の子は・・・」
「ダメだった。原因は寒い中あんな格好で歩き回っていたのもそうだし、無理矢理犯されたことも、最近のストレスも当然ある。よく分かってはいないけど、彼女には染色体の異常、っていうことで伝えるそうよ」
誰が、というのは分かりきったことだ。
今回のこの顛末に、院長もダメージを受けていることが分かる。
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