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「まぁ、昔、あの子は泣くことすらできなかったから、拠り所ができた、っていう意味ではいい傾向なんでしょうけどね」
やれやれ、とそれだけ言うと、院長は立ち上がる。
「つまんない話を聞かせちゃって、悪かったわね。そろそろ戻りましょうか。
放っておいたら、海君の慰めは、公序良俗に触れる程度になっちゃうし」
「・・・はい」
何か聞き捨てならない一言があった気がするが、それには気付かなかったふりをして、前半部分に同意して私も立ち上がり、院長の後に続いた。
『・・・いくら職場じゃないとはいえ、病院でイチャつくのは止めてくれないかしら』
後半部分の言葉の意味を理解するのは、院長がそう言ってカーテンを開いた時だった。
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