Caffe

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 あの後、三日後に私は退院し、日常に戻った。  私が入院している間に、坂木製薬は点滴薬剤の搬入ミスを認め、記者会見と共にその責任が前日死亡した末弟にあることを発表し、謝罪したらしい。 「別荘には、買ってきたばかりのロープが落ちてたらしいよ。あのまま別荘に残ってたら、槙さんも 意味のない心中に付き合わされてただろうね。  お腹の子に感謝しておいた方がいいかも」  後日、家に来た日生ちゃんはそう言っていた。 「どんな状況にあっても槙さんを生かそうとしていたんですよ。多分、私は遺伝子レベルで貴女を愛してるんだと思います」  そのことを伝えると、そう言って海は私の額に口づける。  それでも、私の胸に生まれるのは罪悪感、そして喪失感だった。 「・・・っ。ゴメンね、産んであげられなくて」  膝を抱えてそれだけ言うと、彼は何も言わずに私の肩を抱いた。
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