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彼の手が、優しく私の頭を撫でる。
それが、申し訳なくて、愛しくて堪らなかった。
「ねぇ」
「何ですか?」
「あの男の感触を消して」
涙目で言った私の言葉の意味が分からない、ということはないと思う。
事実、彼は驚いたようにして私を見た。
「・・・っ。それとも、こんな体にはもう触れたくない?こんな、キモチワルイ」
「そんなわけないでしょう?!」
叫ぶようにして否定の言葉を吐き出すと、彼は私の体を抱きしめる。
「何で、貴女は自分を貶めるようなことを言うんですか。私の大事な貴女を傷付けたら、それが貴女自身でも、私は嫌です」
・・・
叱るような、諭すような言葉を耳にして、私の涙腺は崩壊した。
堪らず、彼の胸に身を預け、背中に腕を回す。
だって、あの男に抱かれてから、ずっと体は冷たいままだ
「体の中が冷たいの。温めて」
そう言って、彼の唇に口づける。
誘うように舌を入れると、初めは何かに耐えるようにしていた彼が、堰を切ったように反撃し始めた。
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