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「槙さん、そろそろ起きて下さい。このまま寝たら、風邪を引きますよ」
「ん・・・」
気がつくと、明るい電灯の光と心配そうにこちらを覗きこんでいる彼の姿があった。
ゆっくり起き上がり、自分があられもない姿でいることに気付くと、私は羞恥心を誤魔化すために近くにあったクッションを抱きしめ、顔を隠す。
「ご挨拶ですねぇ。ここでしたい、と言ったのは貴女でしょう」
クスクス笑う彼が、幾分か憎らしかった。
「温まりましたか?」
何が、というのは分かりきっているので、あえてそれには答えずそっぽを向く。
「体の中」
返事の代わりにクッションを彼の顔に押し付けると、彼は嬉しそうに笑みを浮かべた。
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