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ここまで煽っておいて、それはないだろう、と彼を睨む。
向けられた視線をものともせず、彼は私を抱え込んで、抱きしめた。
「教えて下さい」
耳元で、彼が囁く。
「貴方が欲しいのは誰ですか?」
「・・・」
一瞬、乞うような声音が耳元を這っていくような錯覚に囚われる。
「教えて、涼花・・・」
「ひぁっ・・・」
そのまま耳朶を甘噛みされ、涙目で彼を睨むと、何かを訴えかけるような瞳の彼が目に入った。
・・・
「涼」
「海」
彼の名を呼びながら、その体を抱きしめる。
「海」
ゴメンなさい、私は自分のことばかりだった
「海、貴方が欲しい」
きっと、不安だったのは、貴方も同じはずだ。
以前、私が危機に陥った時に死に物狂いで私を守ろうとしていた貴方を思い出す。
その貴方が、平静でいられるはずはないのに。
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