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「いいけど、何?」
少しだけ不安になって問うと、彼は私を遊歩道へと促した。
「ゴメンなさい」
横で聞こえたのは、謝罪の言葉だ。
一体何があったというのだ。
「貴女が坂木に拐われる少し前、貴女のスマホに坂木から連絡があったんです」
「ああ」
当然予測できる事態だったので、特に慌てずにそれを聞く。
「その時、彼が貴女のことを罵るのを聞いて、堪えきれずに言い返してしまいました」
「・・・どんな風に?」
坂木が私のことを罵るのは容易に想像できる。
最早それについては何の感情も沸かないが、彼がどんな風に言い返したのかは、少し興味があった。
「・・・自分本位な貴方と違って、私は槙さんを幸せにする気でいっぱいなので、貴方の存在は迷惑でしかない、と」
目を合わせずに、彼は告げる。
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