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「そんなだから、感じてもらえなかったんじゃないですか、とも言いました。その後少しやりとりをした後、彼は最後に『その言葉を後悔するな』と言って、電話を切りました」
「・・・」
それのどこが悪かったのか、と首を傾げると、彼が苦しそうに言葉を詰まらせたのが分かった。
「ーっ。日生に何があったのかと聞かれて、そのことを伝えたら、追い詰められたら何をするか分からない相手を刺激するな、と言われました。これでお腹の子に何かあっても、私に槙さんを責める資格はないそうです」
そう言うと、彼は私を引き寄せ、私の肩に顔を埋める。
直後に、温かい感触が背中を包んだ。
「不甲斐ない父親で申し訳ありませんでした。あの子を殺したのは私です。
・・・この話を聞いた後、私がいないことで貴女が楽になれるなら、それでも構いません」
その言葉に驚いて、思わず振り返ると、苦しそうな顔で笑う彼と目が合う。
「この先の選択肢は、貴女に任せたいと思います。どうしましょう?」
いきなり突き付けられた事実に驚くより納得する。染色体の異常、というのは彼の嘘だったのだろう。
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