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目を覚ますと、波の音がした。
・・・
あの時もそうだった、と頭の隅でぼんやりと思うが、もう恐怖心は湧いてこない。
代わりに、頭上から聞こえてくる寝息が私の心を落ち着かせた。
「ん・・・」
それが嬉しくて、どこか擽ったくて彼の胸に顔を埋めると、彼がゆっくりと目を覚ます。
「槙さん?今は、何時でしょう?」
「・・・あー、三時を過ぎたところ。綿貫先生のところに行くのって、何時?」
そう問うと、彼は私を抱き締めた。
「六時に、夕飯を一緒に食べよう、ということになっています。その前に、海に行きましょうか」
・・・
そう言うと、彼は私を抱えて上半身を起こす。
「失礼しまシタ」
「-っは」
そう言って彼は私の中から出て行く。
名残を惜しむように彼を見ると、彼はなに食わぬ顔で私を見た。
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