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そういうことか
聞けば、納得できる話だ。
彼は坂木を嫌っている。それと同時に、自分もそうなるのではないかと不安なのだろう。
今の彼を見ていれば そんなことはないと断言できる。ただ、初めて会った時の彼を思えば、その限りではなかった。
未来は不確実で不確定だ。
それは私達に限ったことではない。それなら、たまには素直になってもいいかもしれない。
「ちゃんと気持ちいいわよ。大丈夫」
「それは何よりです」
そう言うと、彼は私の首の付け根に吸い付き、跡を残す。
「-っ」
熱くなった体を放置したまま、彼は私から離れた。
「さて、行きましょうか」
愁いを含んだ笑みを見せ、彼は湯呑みの中身を片付け、コートを羽織る。私もそれに続こうと湯呑みを煽ると、彼は私の分のコートを差し出してきた。
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