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運ばれてきた料理に手をつけ、五分くらい経った頃に突如として呼び出し音が鳴る。
音の主は海のスマホだった。
「おい碧、鳴ってるぞ」
「そうですね。すみません、席を外します」
そう言って、海は席を立つ。
「相変わらず、忙しそうだな」
遠ざかっていく背を見ながら、綿貫先生は懐かしむように言った。
「ところでお嬢さん」
「はい?」
「幸せになれそうか?」
こちらを見て、うって変わって真面目な口調で問う。
そのくせ、ニヤニヤとからかうような顔つきになっているのが可笑しかった。
「そうですね。何とか」
そう言って笑うと、意外そうな目を向けられる。
「?どうかしましたか」
「いや」
そうは言われるが、納得などできるハズがない。
訝しげに綿貫先生を見ていると、何がおかしいのか、笑われた。
「お嬢さん、そんな顔もできるんだな。碧効果だな」
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