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『次の休みこそ、指輪を見に行きましょうね』
そう言われたものの、多忙な救命医である彼に休みなどそうそうあるはずがない。
私の休みはカレンダー通りのため、休みが合うこともなかなかなく、気がつけば桜が咲いていた。
「ん・・・」
暖かくなったとは言え、まだまだ朝晩は冷え込むこの時期。胸元にひんやりとした冷たさを覚え目覚めると、傍らには愛しい男の姿があった。
「・・・海?」
で、何で私はパジャマを全開にしてるわけ
ぼんやり自分の胸元に目を落とすと、前開きのパジャマはボタンが全て外されており、赤い痕がところどころに着いていた。
昨夜、ベッドに入る時にはいなかった海の姿を見て犯人は誰なのか確信する。
「ちょっと」
思わず寝顔をこちらに披露している男の頬を掴む。
「-っ。あ、槙さん・・・?」
一瞬苦痛の表情を見せた彼は、私の存在を認識すると幸せそうに顔を綻ばせた。
「お早うございます。お目覚めはいかがですか?」
爽やかに言ってのける彼を、久々に殴りたい衝動にかられた。
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