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「昼食は食べられますか?パスタと野菜スープなんですが」
「パスタって、ミートソース?」
「一応、ボロネーゼですね」
「・・・じゃあ食べる」
リビングのテーブル横に座ると、彼がスープとパスタを運んで来る。
きしめんのような幅広のパスタには程よくソースが絡んでおり、食欲を刺激させた。
「・・・すっかり胃袋を捕まれたわ」
半分程平らげてから言うと、彼は嬉しそうに目を細める。
「それは何よりです」
そう言って、彼は私を背中から抱きしめた。
お気に入りの玩具にじゃれる猫のように、彼は私にのしかかる。
「あのさ」
「何ですか?」
「まだ食事中なんだけど」
呆れて不満を表すと、彼は残念そうに離れ、代わりに私の腰に巻き付いた。
「一週間ぶりの槙さんですよ。充電させて下さい」
・・・この馬鹿犬は、どうにかならないかしら
それでも、そのぬくもりに安心する自分に苦笑する。
『惚れた弱み』とはこのことか、と半ば諦めながら私は食事を再開した。
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