後日談ーFascino fortunato

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*** 「実は私、夕方からまた仕事に戻らなければいけないので、着替えも持って行きますね」  遅い昼食を食べた後、そう言って彼女を連れてやって来たのは、千葉駅前の百貨店の中にある宝石店だ。 「どれがいいですかね」  けっこう老舗のショーケースを覗いてみるが、はっきり言って、指輪のデザインなどには詳しくない。  こういったものは、本人のセンスに合うものがいいだろう。 「槙さ」 「いらっしゃいませ。どのようなものをお探しですか?」  彼女を呼び寄せる前に、店員に捕まる。 「恋人に贈る婚約指輪を探しているのですが」 「エンゲージリングですね。でしたら、こちらです」  奥にある戸棚に案内され、出された指輪を見てみるが、やっぱりどれがいいのかなど分からない。  分かったのは、値段の相場くらいだ。 「槙さん」  横にいる筈の彼女に声をかけるが反応がない。  ?  不審に思い、横を向こうとすると、後ろから服を引っ張られた。 「次の店に行こ、海」 「はぁ」  彼女にそう言われたので、店員さんに頭を下げてその場を失礼する。  彼女のお望みの品は何処にあるのやら。  
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