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結局、指輪はサイズを注文して、受け取りは二週間後、ということになった。
「本当に、あれでよかったんですか?」
帰り際、彼は若干不安気に聞いてくる。
指輪の値段は八万弱。婚約指輪の相場は知らないが、私はあのデザインが気に入ったのだし、そんなにお金をかけても仕方ないだろう。
「私はあれがよかったの」
「でもあれ、婚約指輪じゃなくて、バースデーリングでしたよ」
店員さんも、困っていたようですし、と付け加えられるが、正直、そんなことはどうでもよかった。
・・・いや、どうでもよくはないか
「お守りみたいなものだし、そんなに高価でも意味ないでしょう?だったら、少しでも貴方を連想させるものがいい」
居心地の悪い思いをごまかすように、彼の腕に寄りかかる。顔を挙げると、顔を赤くしているのが分かった。
ごまかすように顔を手に埋めているが、バレバレだ。
その頬を染めているのが私だということに、優越感を感じながら、駅ビル内を歩く。
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