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「何」
「婚約指輪の相場って、いくらくらいかご存知ですか?」
「知らないけど」
給料の三ヶ月分、という言葉は聞いたことがあるが、まさか全員がそうしているわけではないだろう。
たじろぐ私に、彼は更に溜め息を被せた。
「通常は、あの指輪の四~五倍です」
「へぇ」
そんなものか、と思っていると彼の手はピアスに伸びる。
「というわけで、このピアスはどうぞ遠慮なく受け取って下さい」
そう言うやいなや、ピアスを手に取りレジへと向かった。
「私、ピアス穴はふさがってるんだけど」
その背に向かって声をかけると、レジへ向かう途中にピアッサーも手に取る。
「ハイ、どうぞ」
数分後、彼はそう言ってラッピングされた袋を差し出した。
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