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ピアノの演奏は美しく、心地よいものだった。
そして演奏が終わると、ピアニストである女性の前には人だかりができる。
「じゃあ、ちょっと行ってくるね」
花束を買っていた彼女も例外ではないらしく、そう言って席を立った。
ピアニストの腕には、既にいくつもの花束が抱えられている。
人気者も大変ね、とぼんやりそれを眺めていると、視界の端に金属製のそれが映った。
え
キラリと、照明を反射させて光りを放つそれは、どう見ても刃物だ。
私が立ち上がろうとした瞬間、誰かがよろめき、彼女にぶつかる。
「大丈夫ですか?!」
周囲の男性がそう言ってぶつかってきた女性を助け起こした後、彼女の手から刃物は
消えていた。
というか、ぶつかってきたのは・・・。
日生ちゃん、何やってるわけ?
呆れたのと安心したので、口からは溜め息が出た。
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