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「人は何かを思い出している時、目が左に動くんだよね」
「・・・」
そういえば、彼女の専門は行動心理学だった。
観念して肩を竦めるが、その内容については触れずにおいて欲しい、というのはワガママだろうか。
「主語はI ?You ?He?She?」
・・・は?
一体何?
「あ、日本語で言わなきゃダメか。『私は』?」
・・・
固まる私をよそに、日生ちゃんは続ける。
「悪趣味。もう止めてやれば?」
状況が読めず、呆然としていると、アル少年から制止の声がかかった。
「・・・つまり?」
私が問うと、彼は溜め息を吐く。
「人間の脳には、記憶や感情を司る『大脳辺緑系』って部位があって、自分の記憶に引っかかる言葉があれば、そこが反応するらしいぜ」
「え」
「つまり、日生はその部位の反応を見て、アンタの記憶にある海の言葉を探ろうとしている ってこと」
そう告げられた瞬間、背筋に冷たいものが走った。
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