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「ホントだってばー。信じてよー!」
終いには、拗ねるように後ろからじゃれついてくる。
こういう所は、本当に海と似ていた。おかげで、怒る気にもなれない。
「まぁ、もういいけどね」
「わーい、流石槙さん」
そう言って、腕に巻きついてくる彼女に肩を竦めながら、溜め息を吐く。
顔を挙げると、信じられないものを見たかのような形相で、アル少年がこちらを見ていた。
「・・・アンタ、猛獣使い?」
「は?」
「失礼なヤツね」
私の、険の入り交じった声に臆したのか、日生ちゃんの変わり様を見て『マズイ』と判断したのか、彼はもうそれ以上は何も言わずに溜め息を吐く。
「まぁ、いいや。とりあえず、俺はこれで帰るわ」
そう言って、彼は踵を返した。
その背中に、日生ちゃんの声が飛ぶ。
「OK。今回の報告はどっちがする?」
「俺、二宮課長の連絡先知らないけど」
振り向いた呆れ顔の彼に、日生ちゃんが得心顔で頷いた。
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