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「日生ちゃんと話してると、時々悲しくなってくるわ」
「私もやってられなくなることなんてしょっちゅうだから、安心して」
アハハ、と乾いた笑いがその場に響く。その言葉には、もう反論する気力もなかった。
そんな話をしながら歩いていると、先程花を買った花屋の前で、彼女は立ち止まる。
「いらっしゃいませ」
「すみません、赤いカーネーションはありますか?」
「ええ。切り花でよろしいでしょうか」
「はい。十四本お願いします」
日生ちゃんの注文に、店員はさっそく応えていく。
呆気に取られながら、私は横にいる彼女の手を引いた。
「一体どうしたの?」
「槙さんも買っていく?」
「は?」
話が見えず、思わず聞き返すと、彼女は複雑そうな笑みを浮かべた。
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