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「ロシアでは、墓前には赤いカーネーションを供えるんだって。そして、その数は偶数。まぁ、亡くなった当時は十四だったから、おあつらえ向きだね」
そこまで言われて、彼女が誰の話をしているのか分かった。
「いつもはちゃんとロシアまで行くんだけど、今年は忙しくてさ。
そういうことだから、槙さんも、子供の花とか買いたいんだったらどうぞ?」
『もう半分の用事』が何だったのか、謎が解けた気がした。
「そうね」
誘いに乗って、私も菊の花を買う。
そして、店を出てふと気が付いた。
「日生ちゃん、その花はどうするの?」
私は菩提寺の墓前にでも供えればいい。だが、彼女が供える墓はロシアのはずだった。
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