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「海に流すよ。海は、世界中と繋がっているからね」
私の方を見ずに彼女は言った。
そう言いながらも、彼女の足は海の側にある寺院へと向かう。
ご本尊を通り過ぎ、墓地の中を進んで行くと、その奥に海に面した崖があった。
足早に進む彼女を追いかけ、自然と駆け足になる。張られた柵の手前に置かれたベンチの横で立ち止まり、彼女は息を吐いた。
「ゴメンね、槙さん。大丈夫?」
「・・・若さには敵わない、と思ってるところよ」
長く息を吐きながら言った。
「槙さんも、日常的に切った張ったをやってれば体力つくよ」
「そんな日常はゴメンだわ」
そう言うと、彼女は笑う。
「そっか。でも、私は後悔してないよ。太陽(タイヨウ)にも逢えたし」
「そう」
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