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そして二週間後、海に婚約指輪を贈られ、その翌朝 私は普段通りに出勤する。
指輪に関しては、やっぱり院長には一番に声をかけられた。
「おはようございます、院長。本日の予定ですが」
「おはよう。その指輪は海君から貰ったの?」
挨拶もそこそこに、そう言われる。
「ええ、まぁ」
「その石、エメラルド?」
「はい」
「そう。海君の目と同じ色ね」
そう言って、楽しそうななまあたたかい笑みを浮かべた。
「・・・」
正直、居心地が悪いことこの上ない。
「そういえば、指輪を見に行ったのが先々週の日曜だったんですが、その前日、日生ちゃんが家に来ましたよ」
ごまかすように咳払いをして、話題を変えると、意外そうな目を向けられた。
「あら珍しい。日本にいたのね」
彼女はここ二年程、桜の咲く時期になるとロシアに行っている。
院長も、それは知っていたようだ。
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