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「彼女の『用事』に付き合って、海の『あしながおじさん』宅の男の子に会いましたよ。
ジャレつく日生ちゃんを見て、何故か『猛獣使い』と称されました」
「上手いこと言うわね!」
笑い出した院長を前に、いたたまれない気持ちになったのは言うまでもない。
「まぁ、あの子は負い目や利害関係のある人間に甘えられる子じゃあないから、これからも、末永く甘やかしてあげてちょうだい」
「はぁ」
院長の言葉に頷くと、あの日に打ち明けられた彼女の過去が頭に過る。
「院長は、太陽の生い立ちなんかについては知っていたんですか?」
「一応、日生から聞いてはいたわ。本人も、自分の体のことは知っていたみたい。日本には桜を見に来た、何て言ってたけど、どうかしらね」
雪の日が続いていた三年前の冬、桜を見たいと言った彼を連れ、日生ちゃんが外出許可を取って、伊豆へ早咲きの桜を見に行ったことがあったことを思い出した。
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