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「全員が全員、そうなる訳ではないでしょうが。現実には、虐待や道を踏み外すリスクの方がずっと高いわよ」
うんざりとしながら、溜め息を吐く。
事実、救命センターには虐待されて運ばれてくる子供もいた。
「結局は、本人の運や資質によるんでしょうけどね。それでも、医者としては、そんな『奇蹟』に頼るような真似はしたくないわ」
宮城医師がそう言って椅子に座ると、両手を挙げて伸びをする。
確かに、仕事以外でも大変そうだ。
「お疲れ様です。コーヒーでも淹れますか?」
「ありがとう。じゃあ、お願いしようかしら」
***
そして約五分後、彼女の分もコーヒーカップを持って席に戻ると、彼女は針と糸を手に、裁縫をしていた。
「・・・それ、お子さんのですか?」
彼女の手にあるのは名札付きの巾着袋だった。
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