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「いえ。そこまでは」
そう答えて、手元にあった飲みかけのコーヒーを口にすると、宮城医師は再び溜め息を吐く。
「そう。じゃあ、次回の回診の時にでも聞いてみるわ。とりあえず、ありがとね」
彼女もそう言うと、手元にあった内職を再開させた。
***
「・・・宮城先生」
「何?」
コーヒーカップが空になった後、躊躇いながらも話しかける。
「彼女の腕についていた痣、気付きましたか?」
「・・・」
「腕の内側にあった、無数の痣。あれは、彼女が何者かの攻撃から、お腹を守った、ということですよね?」
「そうね」
「子供が産まれれば、旦那さんは変わってくれる、と彼女は言っていましたが、実際はどうでしょう?」
そこまで言うと、彼女は呆れ顔で私を見た。
「そんなの、希望的観測に過ぎないのは分かってるでしょう?現実には、そうならない確率の方がずっと高いわよ」
「・・・彼女のDV被害について、警察に連絡は?」
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