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「そうでしたか」
動揺を悟らせないよう、あくまで平然を努める。
「申し訳ありませんが、私では分からないので、後で、面会時間にいらして下さると、助かります。それで、宜しいでしょうか?」
威圧感を込めて言葉を重ねると、男は渋々と頷いたようだった。
「・・・お疲れ」
男が去っていくと、宮城医師から声をかけられる。
やれやれ。
「お疲れ様です。で、問題はこの後ですが、どうします?」
「どうもこうもないわ」
その言葉に込もっていたのは、呆れではなく諦めだ。
「さっきの相手。・・・見たところ、プライドの高い、一見まじめな、外面のいいタイプね。
多分、姉夫婦から怒られてここに来たんでしょうけど、ああいうのは、劣悪な内面が表に出ない分、面倒よ」
その言葉に、これからかかる手間を考えてうんざりする。
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