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押田桃子の病室に行き、担当医が代わったことを告げると、彼女は意外そうに私を見た。
「宮城先生、私のことが嫌になっちゃったんですか?」
「いいえ。実は、彼女はシングルマザーなんです。息子さんが急に病気になってしまったらしくて、今後は私が担当することになりました。よろしくお願いしますね」
そう言って笑いかけると、彼女は驚いたように目を見開く。
「そう、だったんですか」
一瞬憂いたように下を向いたのは、気のせいではないだろう。
しかし、彼女はすぐさま顔を挙げて、笑みを作った。
「そういうことでしたら、よろしくお願いします、碧先生」
「はい」
これで、宮城医師の印象もよくなるといいのだが
頭の片隅でそんなことを思いながら、私は彼女に手を差し出した。
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